張遼:「…夏侯惇、いいか?」
夏侯惇:「ん、なんだ?ちと待てよ〜」
王異:「私に構わなくても大丈夫よ」
夏侯惇:「じゃ、また後でな」
夏侯惇:「おう、張遼の旦那、なんでぃ?」
張遼:「うむ、実は次の戦に、おまえの助力を借りれぬものかと思ってな」
夏侯惇:「俺の?」
張遼:「あぁ。おまえの力については誰よりも知ってるつもりだ。頼む、力を貸してくれ」
夏侯惇:「まぁ、別に構わねぇけどよ…孟徳が何て言うか…?」
張遼:「曹操殿には承諾は得た。何、大した相手ではないんだが、主力が皆、別に動くのでな」
夏侯惇:「ふぅ〜ん…ま、構わないけどよ」
蔡文姫:「惇兄が行くなら、あたしも行く〜」
夏侯惇:「…は?さ、蔡文姫、おまえ、いつからそこにいたんだ?」
蔡文姫:「いつからって、さっきからいたよぉ〜。な〜に、あたしがいたらダメなの?」
夏侯惇:「だ、ダメとかじゃなくてだな…あ、ほら、おまえが行っても役に立たない…とは言えないかもしれないけど、足を引っ張る…じゃなくて…」
蔡文姫:「…惇兄は、あたしがおにもつだと思ってるんだ。そっかぁ、そう思ってるんだ〜」
夏侯惇:「い、いや、そうじゃなくてな?ほ、ほら、張遼も何か言ってくれよ」
張遼:「…別に構わんが」
夏侯惇:「だろ?だから…て、おい!ちょっと待て、おまえ!」
張遼:「なにぶん、人が足らんからな。頭数だけでも欲しいところだし」
夏侯惇:「だぁっ、待て待て!おまえ、正気か?女性の、しかも文官みたいな奴を連れてくなんて…」
張遼:「文官みたいじゃダメなのか、おまえは?」
蔡文姫:「惇兄…」
夏侯惇:「わ、わ、わ、な、泣くな!泣かないでくれ、頼むから…な、な?」
蔡文姫:「ひっく、ぐすっ…」
張遼:「まったく…いくら節操がないとは言え、女を泣かすとはな…」
夏侯惇:「ち、張遼!?い、言っていい事と、悪いことがあるだろ!」
張遼:「今のはいいことであろう」
夏侯惇:「よくないっ!」
王異:「まったく…部屋の前でぎゃあぎゃあと喚くな」
夏侯惇:「…あ、す、すまねぇ…」
王異:「ほら、もう泣くな。誰もあなたを責めてなぞおらんのだからな」
蔡文姫:「ひっく、ぐすっ…うん」
王異:「…謝れ」
夏侯惇:「…は?」
王異:「この子に謝れ。あなたに非がある以上、しかと詫び、許しを請うのが当然だろう?」
夏侯惇:「そ、そんなこと言ってもだな…」
王異:「謝れ」
蔡文姫:「……」
張遼:「……」
夏侯惇:「ぐっ…す、すいませんでした…」
王異:「それで良い。良かったな?」
蔡文姫:「うん!」
張遼:「ふふっ、天下に名高き隻眼の猛将も、一人の女の前には形無しか」
夏侯惇:「お、おい、張遼!?」
張遼:「さて、では出陣の支度でもしてくるか。女に弱い猛将殿に怒られては、こちらがかなわんからな」
夏侯惇:「この、人のことを棚にあげて、なんなんでぇ!?」
王異:「…ふふっ、はははっ、あははははっ…!」
夏侯惇:「な…そ、そんなに笑うことじゃねぇだろ!?」
王異:「いや、すまない…でも、おかしくておかしくて…はははっ…!」
夏侯惇:「だ、誰のせいだと思ってるんだ、この野郎!」
曹操:「…やれやれ、女っ気が出たかと思ったら、これか…しょうがない奴だな」
卞皇后:「最も、女っ気が出過ぎて、回りに咎められるというのもどうかと思いますけど?」
曹操:「…ゴホン、あー、俺にはおまえが一番だ」
卞皇后:「口先だけ…分かっていますわ」
曹操:「分かったよ、もう浮気とか考えないから、な?」
夏侯淵:「…早く軍議、始めませんか?」
郭嘉:「まったく、人を呼び出しといて、何をするのかと思えば、覗き見とは趣味が悪い…」
荀ケ:「まぁまぁ、多めに見ておいてあげましょう。殿のことも、夏侯惇殿のことも」
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