夏侯惇:「…で、だ。おまえ、西涼に戻るんだって?」
王異:「えっと…国に、家族も残しているから」
夏侯惇:「そっか…まぁ、しょうがねぇよな」
王異:「…それでいいの?」
夏侯惇:「ん、何がだ?」
王異:「…鈍感」
夏侯惇:「は、はい?」
王異:「もういいわ。それならそれで、あの蔡文姫って子と、一緒に遊んで暮らしなさいな」
夏侯惇:「お、おい、待ってくれよ。話が訳分かんねえって」
王異:「ついてこないで、もういいの」
夏侯惇:「お、おい…?」
夏侯惇:(何だよ、急に…)
曹操:「…まったく、女の扱いがなってないな、惇よ」
夏侯惇:「おわぁっ、も、孟徳か!?き、急に出てくるなよ!」
曹操:「いや、たまたま近くを通りかかったからな。しっかしまぁ、だらしないなぁ…」
卞皇后:「あなたのようにおべっかを使うよりはましです」
曹操:「卞、それは言わない約束…」
夏侯惇:「なんだ、皇后様も一緒でしたか」
卞皇后:「この人が勝手な行動をしないように、歯止めをかけていたのです」
夏侯惇:「…てことは、さっきから見てたって事だな、孟徳」
曹操:「あー、その、なんだ。ま、気にするな」
夏侯惇:「気にするわ!何のぞいてやがんだ、エロガッパ!」
曹操:「だ、誰がエロガッパだ!?」
卞皇后:「あなた、余計なこと言わない」
曹操:「ぐ…」
卞皇后:「…にしても夏侯惇様、先ほどの態度、あまりいただけませんわね」
夏侯惇:「…へ?」
卞皇后:「戦う相手の心を見抜き、畏縮する相手の心を射抜くような戦いが出来るのに、女性相手にはやられっ放しですね?」
夏侯惇:「な、そ、それは…!」
卞皇后:「よろしいですか?女性は時に、相手に優しくしてもらいたくて、あえて突き放すこともあるのですよ?それを無下に突き放したりしては、女性は返って呆れるものなのですよ」
夏侯惇:「いや、そりゃあ…」
曹操:「…俺からも言っておこう。女は言葉通りのことを口走るとは限らん。時にはその裏を読むことも大事だ」
夏侯惇:「……」
卞皇后:「…さぁ、早く後を追ってあげなさい。きっとまだ、あなたのことを待っているはずですよ?」
曹操:「ほれ、早く行ってこい。まだ戻ったわけではあるまい?」
夏侯惇:「…分かった、行ってくる」
夏侯惇:「…王異!」
王異:「…!」
夏侯惇:「その…さっきは、すまねぇ」
王異:「?何を謝ってるの?」
夏侯惇:「い、いやあよ、その…」
王異:「…本当に鈍いんだから…」
夏侯惇:「へ?」
王異:「もう、言いたいことがあるなら、先にはっきりと言いなさい!」
夏侯惇:「あ…えっと、その…」
王異:「……」
夏侯惇:「…お、俺は…お、おまえのことが…」
王異:「……」
夏侯惇:「…好き…かな、王異?」
王異:「…なぜたずねる」
夏侯惇:「い、いや、その…」
王異:「…情けない奴だ…」
夏侯惇:「な、なんだと!?」
王異:「そこで怒るのが、そなたの悪いところだ」
夏侯惇:「お、おいっ!」
王異:「…でも、そういう風に素直なのが、あなたの良いところだと思う。私はそういうところに惹かれたのかな」
夏侯惇:「…え?」
王異:「私もあなたのことが好きよ。えっと、夏侯惇?」
夏侯惇:「…あー、気軽に惇でいいぞ?みんな、惇兄だの惇だの勝手に呼んでるからな」
王異:「…じゃあ、惇。これからもよろしくね?」
夏侯惇:「…おう。これからも頼むわ、な?」
〜恋愛忠義伝〜 夏侯惇×王異編、完
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